インクペディア
リコーハンディプリンターの実力をマニア目線で検証する
昨年、あるプリンターが「4か月待ち」になったことをご存知でしょうか。
メーカーは、エプソンでもキヤノンでもなく、リコーです。
普通、プリンターにセットできないノートの表紙や段ボールに印刷できる手のひらサイズの「新感覚」プリンター、「RICOH Handy Printer」の使い勝手と、より安く印刷するための最新情報をご紹介いたします!
1.リコーのハンディプリンターとは
2019年4月、リコーから「ハンディサイズのモノクロインクジェットプリンター」が発売されました!!
体重量約300g、連続で2時間駆動できるバッテリーを備えた手のひらサイズのプリンターです。
印刷したいものに当ててスライドするだけなので「プリンターにセットできないもの」にも印刷することができます。
値段はオープン価格ですが、当初の市場価格は46,000円ほど。
安いものではないですが、人気が過熱して夏を過ぎても欠品状態が続き、値段が下がり始めたのは10月頃でした。現在は概ね40,000円ほどで販売されています。
このプリンターは、2019年のグッドデザイン賞、日経優秀製品・サービス賞も受賞しています。かなりの話題を集め、プリンターとしては、「4か月待ち」という空前の人気ぶりでした。
2.ハンディプリンターの仕組み
ここからは、このハンディサイズのプリンターをマニア目線でレビューしたいと思います!
通常のインクジェットプリンターは、「プリントヘッド」という「インクの吹き出し口」が紙の上を左右にスライドし、至近距離からインクの微細な粒を紙に吹き付けることで印刷を行います。
ですが、このハンディプリンターは、簡単に言ってしまうと「インクの吹き出し口」の周辺だけを取り出したもので、人間の手でスライドさせて印刷します。
言葉にするとシンプルですが、人の手でスライドさせる場合、スピードが機械のように一定にはなりません。機械の裏側にはレーザーマウスのようなセンサーが付いていますので、これで動きを検知して、インクを吹き出す量を調整しているようです。
今のところ、日本ではリコーが唯一の大手の販売元ですが、同様のプリンターはアメリカのクラウドファンディングなどでも見かけることがあります。
すでに海外で発売されているものの中には、「タトゥー用のプリンター」もあるようです。人の体に印刷できて、インクは洗えば落ちるのだとか。
イベントなどで重宝しそうですが、私がボケて徘徊するようになる頃には、お散歩に行く前に連絡先を腕に印刷されるのが普通、なんてことになるのかもしれません。
ところで、先に言っておきますが、このリコーのハンディプリンターは人体には使えません。なぜ「使えない」と言い切れるかは・・・記事を最後まで読んでいただければ分かります。
3.使い方と印刷のコツ
まず、弊社に届いたハンディプリンターを開封してみましょう。
なるほど、「かんたんセットアップ」ですね。
・・・・・って、A3両面で3枚もあるんですか!?
あまり簡単じゃなさそう・・・・(汗)
そっとフタを閉じたくなるのをガマンして、とりあえず本体を取り出してみます。
おお~思ったより大きめです!!
もっとこう、手のひらにすっぽり入るサイズだと思ってましたが、そこそこの大きさ!!
ボリュームとしては、ガムテープよりちょっと小さい、くらいの感じでしょうか。
「かんたんセットアップ」に従って、インクを開封します。
ん・・・?どこかで似たモノをお見かけしたことがあるような・・・?
このインクをセット・・・いやまて、どこから開けるんだ・・・おっと、結構ハデな音を立てて開きましたね。一瞬壊したかと思いました(汗)。
インクをセットして、フタを閉じて、さて、充電・・・あれ?ケーブルは?
付属してない・・・!
・・・妙なところをケチりますね、リコーさん。・・・いや、確かに、このご時世ですから、このプリンターを買おうという人のところには、USBケーブルの1本や2本・・・ありました。
充電が完了すると、電源ボタンが消灯するそうです。
しばらく待ちましょう。
充電を待つ間に、アプリをダウンロードしましょう。
(iOS、Android、Windows®端末用アプリ「Handy Printer by RICOH」は無償公開中です)
今回は、iOS版を使用していきます。 さっそくアプリをダウンロード・・・ん?
日本が誇るグローバルカンパニーのリコーさんが作っているアプリなのに、評価が妙に低い・・・。悪い予感しかしない・・・。
いやいや、世の中にないガジェットなんて、最初の評価はこんなもんですよ。
リコーさんの360度の全天球カメラだって、展示会で出た当初こそ「撮影する本人が必死に腕を伸ばす姿がでっかく写ってかっこ悪い。使いたくない。」と評判がイマイチだったけれど、今はある程度の定番に落ち着いたじゃないですか。
・・・そんな昔話はともかく。
アプリ自体は直感的に操作できます。難しいことをしなければそんなに迷わずに済みそうです。
ただ、テキストをポイント数で設定するので、実際のどのくらいのサイズの文字になるのかよく分かりません。欲を言えば、例えば上下のミリ幅で言ってくれた方が分かりやすいような気がします。
充電もある程度できたようですので、繋いでみましょう。Bluetoothで接続。特に問題なくつながりました。
早速テスト印刷!
「メンテナンス印刷中」という表示が出ましたね。えーっと、説明書には書いてない事態ですが、こういうことでしょうか。
なるほど、普通のインクジェットプリンターでもたまに必要なやつですね。
では、本番行きましょう!!!
せっかくなので、プリンターに入らないものに印刷してみます。
できました!!
まっすぐに引っ張ったつもりですが、少し曲がりましたね。
右肩上がりってことで許してもらうことにしましょう。
QRコードも印刷できました。ちょっとテンションが上がります!!
写真も印刷できるようなので、ではつい先ほど撮った、このプリンターの姿を・・・
・・・うまく行きませんね。
・・・・・・2回目の方がダメですね。うまく印刷できる気がしません。
写真の印刷機能は見なかったことにしましょう!
何回か印刷して分かったことは、
・微妙に曲がりがち
・ボタンを押しても、すぐには印刷されない(空走距離が結構ある)
・モタモタしていると「本体をケースに戻せ」と怒られる
ということです。
まっすぐにスライドできるように、プリンターの底面にはローラーが付いていますし、ガイドも付いているのですが、なかなか「完全にまっすぐ」にはスライドできません。
また、行が複数あるものは、何度かスライドさせる必要がありますが、その微妙な差が累積して現代アートみたいになってしまいます。(笑)
空走距離は、ボタンを押してからだいたい2~3センチでしょうか。用紙の設定によっても変わるのかもしれませんが、平たく言うと、「思ったよりも右側」に印刷されます。
このプリンターは構造上、ケースから出すとプリントヘッドがむき出しの状態になります。このままの状態で時間が経ってしまうと、万年筆のように、プリントヘッドでインクが乾いて固まってしまいます。そのため、一定時間が経過するとエラーが出るようになっています。
ある程度の慣れが必要で、かつ、「失敗してもいいもの」に使う、というのが正解のような気がします。
ちなみに、マスクには一発で印刷できました!!
・・・良識のある読者の皆様におかれましては、絶対にマネしないでいただきたいと思うのですが、わたくし、自分に印刷できるかどうか、試してみました。
ご覧の通り、ダメでした(笑)
紙のように平面ではないので、プリントヘッドをこすってしまうのです。
ただの「汚れ」にしかなりませんし、そもそもこのインクが人体に無害かどうかも分かりませんので、繰り返しになりますが、絶対にマネしないでください。
4.インクカートリッジを安く手に入れるには
さて、気になるインクカートリッジですが、このリコーハンディプリンター用のインクカートリッジ、「 HC01K 」とよく似た形状のものを当店でもお取扱いしています。
我々業界人が「ヘッド付き」と呼ぶタイプのインクです。キヤノンやHPのプリンターで、このタイプのインクがよく使われます。
当社では、この「ヘッド付きインク」に強い工場に、再生カートリッジ(リサイクルインクカートリッジ)が作れるかどうか、昨年より打診しています。
今のところ、この「 HC01K 」は、レックスマーク( Lexmark:米 )のインクカートリッジに、全く同じ形のものがある、というところまでは確認できています。
ただ、そのインクカートリッジをそのままリコーのハンディプリンターに使うと印字が乱れるということで、再生インクカートリッジ用のICチップ部分が作れるかどうか確認中、という段階です。
今のところ、残念ながら「 HC01K リサイクルインクカートリッジ」の具体的な入荷予定は立っていません。
純正品は、税抜定価5,000円で、Amazon等では4,500円を下回る価格を出している電気屋さんがある、という状態です。
インクの減りが心配で使いにくい、という多くのユーザー様のために、インクのチップスでは、引き続き、サードパーティー品の情報を集め続けます!
今後も、インクのチップスをよろしくお願いいたします。(H)