インクペディア
通をうならせる「産地」と「粒の大きさ」へのこだわり
「Bean to Bar」、ご存知ですか?
突然ですが、チョコレートのお話です。
若いころは「バレンタイン」という風習が好きではありませんでした。
理由ですか?お察しいただければ幸いです。
私が2月14日という日に怯えなくてもよい年齢になった頃から、世間では百貨店のイベントが火付け役となり、高級チョコレート市場が急成長しました。
「ショコラティエ」という言葉も耳になじんだものになってきました。
2015年ころからよく聞くようになったのが「ビーン・トゥ・バー」というキーワードです。
これは原料のカカオ豆(Bean)からチョコレートの製品(Bar)までの加工を一つの工房で行うことを指します。カカオ豆の産地の違いによる風味の違いとセットで語られることも多い、比較的最近のムーブメントです。
一般的に、高級チョコレートのブランドと言えど、カカオ豆から加工しているブランドは多くはありません。
製菓用チョコレート専門メーカーから、板チョコ状の原料を仕入れ、加工しているブランドが大半です。製菓用チョコレートのメーカーとしては、ヴァローナ社などが有名です。
製菓材料の専門店でも販売されているので、ご存知の方も多いのでは。
もちろん、それはそれでおいしいのですが、「ベルナシオン」や「ピエール・マルコリーニ」など一部のショコラティエが、カカオの原産地に足を運び、直接カカオ豆を仕入れ、焙煎や粉砕といった加工を以前から自らの工房で行っていたことが注目され、波及してきました。これが近年の「Bean to Bar」の流れを生みました。
ショコラティエが直接カカオ豆を仕入れることで、カカオ豆の産地ごとの風味を生かしたプレミアムなチョコレートができますが、それ以外にフィリップ・ベルナシオン氏とピエール・マルコリーニ氏が口を揃えて訴える「メリット」は、自社工房でカカオの粉砕・ペースト化を行うことで「徹底的に滑らかなチョコレートが作れる」ということです。
そういえばフィリップ・ベルナシオン氏は、何年か前に新宿伊勢丹の催事場で、通訳が苦笑いするほど「粒が細かくて口どけが滑らか」をお客さんに向かって連発していました。
ピエール・マルコリーニ氏によると、「20μm以下のものは、人間の舌は『粒』を感じない。だからウチのチョコレートは16μmまで粉砕する」とのこと。
Bean to Barの草分けである両氏がそこまで強調するからには、チョコレートの「粒の大きさ」は美味しさの大切な要素なのでしょう。
インクのチップスでは、トナーの「産地」と「粒の大きさ」にこだわります
「一般的な安いものは、どこで作られているか分からないし、不純物が入っていることもある」
「同様に、安いものは、粒の大きさが揃っていない」
これは、互換トナーカートリッジの「中身」である、トナーパウダーの話です。
レーザープリンタに使用されるトナーカートリッジの中には、色のついた「粉」が入っています。この「粉」は主に樹脂でできていて、熱で溶かされることで紙に定着します。
このトナーパウダーは、粒が大きすぎると溶けにくいため、紙に定着せず、指でこするとザラザラした手触りとともに紙からはがれ落ちてしまいます。
一方で、粒が細かすぎるとプリンタの内部で粉が舞ってしまい、プリンタの故障の原因にもなります。また、本来白紙であるべき部分に粉が付着してしまうこともあります。
インクのチップスで販売しているトナーカートリッジは、原料の「産地」を限定し、「粒の大きさ」にも徹底的にこだわっています。
良いトナーを使用すると、上の画像のように、文字の輪郭がはっきりとして読みやすい文字が印刷できます。(TN-291/296互換トナーを使用しています)
残念なことに、中国などで安いトナーを買い付けると、「パウダーの粒が大きすぎるもの・小さすぎるもの」が混入していることがあります。
日本国内で出回っている互換トナーや再生トナーでも、そういったトナーは珍しくありません。
ショップ名は伏せますが、以前当店で調べたところでは、粒が揃っていないばかりか、糸状のホコリまで混入しているトナーパウダーが充填されているものもありました。
アマゾンなどではかなり売れているショップのものだったので、本当にびっくりしました。
何かの間違いじゃないかと思って、わざわざ中国の提携工場まで持っていって「コレ、どう思う?」と顕微鏡をのぞいてもらいましたが、「どこのトナーパウダーだか分からないけど、ひどいね」と呆れていました。
こういった「出所が分からない」材料は、品質も期待できません。インクのチップスでは、トナーパウダーの選定を提携工場任せにせず、トナーパウダーの工場まで足を運び、技術レベルや最新の情報を確認しています。
一流ショコラティエが中南米やアフリカなど、「カカオ・ベルト」と呼ばれる熱帯雨林地域に足を運ぶのは、決してパフォーマンスではないと思います。
トナーパウダーのような工業製品ですら、現地に行って初めてわかることがたくさんあるのです。
インクのチップスのトナーは、パウダーの直径を指定した特注品
ピエール・マルコリーニのショコラは16μmまで細かくするそうですが、インクのチップスのトナーパウダーは、機種にもよりますが8~9μmが中心値です。
チョコレートはペースト状、トナーパウダーは粉末ですから見た目は全然違いますが、たまたまサイズ的には近いものがあるようです。
カカオを滑らかなペースト状に仕上げるには、カカオをローラーなどですり潰していきます。
ベルナシオンの工房では、この工程を徹底することで、ご自慢の口どけを実現しているとのこと。
当店のトナーカートリッジに使用されているパウダーは、簡単に言うと「荒い網目」で大きいものを取り除き、「細かい網目」で小さすぎるものをふるい落とした、その中間のもの「だけ」を使用することで、粒の大きさを揃えています。
そういった精製を重ねたプレミアムグレードのトナーパウダーを供給しているメーカーは日本や中国のほかに、米国にもあります。
プリンタとの相性で、どこ製のパウダーを使うかは機種ごとに違ってきます。
品質が高い分、1キログラムあたりの単価は「普通の互換トナー用のパウダー」よりも高額になりますが、「互換トナーの草分け」としてのプライドを賭けてなんとか頑張っています。
インクのチップスはこれからも、少しでも良いものをお届けするためにミクロの世界までこだわってまいります!